December 20, 2023

【簡単に】セントラルキッチンとは?料金相場・メリット&デメリット・配送方法

セントラルキッチンとは食品の調理工程を中央化し効率化を図るための施設です。大量生産をして大量消費をするという前提に成り立っていますので、複数の店舗を持つチェーン店や学校施設などで広く導入されています。

セントラルキッチンが調理のほとんどの工程を担うことで店舗での作業が極限まで簡素化されるため、新人スタッフのみで店舗営業ができるようになる点がメリット。

本記事では、セントラルキッチンの特徴や構造、料金相場などを解説します。

セントラルキッチンの特徴と方式

セントラルキッチンとは調理工程を集中化し、大量の調理を効率的に行うための施設です。セントラルキッチンの中でも冷蔵・冷凍状態での出荷に特化した施設のことを「クックチルセンター」と呼ぶこともあります。

セントラルキッチンは、セントラルキッチンと複数の施設で成り立ちます。セントラルキッチンで調理工程の大部分を担当することで施設での調理負担を減らすため、施設で行うのは盛り付けや簡素的な調理工程のみです。

セントラルキッチンは1970年代ごろからファミリーレストランチェーン業界を中心に広がり始めました。少しずつスーパーマーケットの惣菜製造でも採用されるようになり、現在は病院や福祉施設、教育施設においても導入が進んでいます。

1日数百食の小規模なものから、数千食の大規模なものまでさまざま。セントラルキッチンでは肉や野菜など原料に近いものから、完成品まで取り扱います。

セントラルキッチンのシステムと仕組み

セントラルキッチンの仕組みは下記の通りです。セントラルキッチンで調理工程をマニュアル化しスタッフを配置、仕込みされた状態の料理を配送会社が店舗や施設に配送し、現場で簡単な仕上げをして提供します。

〈セントラルキッチンが担当する工程〉

  • 原材料の入荷と検収
  • 下処理
  • 調理
  • 配送準備(冷蔵・チルド・冷凍)

〈店舗が担当する工程〉

  • 仕上げ作業
  • 盛り付け
  • 提供

セントラルキッチンとサテライトキッチンの違い

セントラルキッチンとサテライトキッチンの違いは、調理中心の施設であるのか、調理・加工・配膳中心の施設であるかどうかです。

セントラルキッチンはまとまった量の調理を行う施設。一方サテライトキッチンはセントラルキッチンで調理した食事を再加熱したり、盛り付けたりしたうえで配膳を行うための施設です。

セントラルキッチンの言い換え

セントラルキッチンは、「コミッサリー」や「集中調理施設」などと言い換えることができます。

コミッサリーは元々は兵站部隊を表す軍事用語ですが、それが転じてチェーン展開する飲食業における一次加工をする施設を指すようになりました。

また、給食用のセントラルキッチンであれば「給食センター」と呼ばれることもあります。

セントラルキッチンのメリット

セントラルキッチンには、業務内容や人件費を効率化できるというメリットや、安全面に考慮しやすいといったメリットがあります。

ここでは、セントラルキッチンならではのメリットを5つ解説します。

業務内容や人件費を効率化できる

セントラルキッチンの導入は、原材料費高騰や人件費上昇などをカバーでき、原価の低減や業務削減にもつながります。

例えばスーパーの惣菜をセントラルキッチンで調理すれば、スーパーのバックヤードでの調理工程を撤廃できるでしょう。調理工程を集中化できるため、調理マニュアルの流出が防げるという利点もあります。

品質を均一化できる

セントラルキッチンで一括調理を行えば店舗による品質のバラつきを抑えることもできるでしょう。

多店舗展開の飲食店の場合、現場によって味や品質に差が出てしまうケースがありますが、セントラルキッチンであれば品質を安定させることができます。

店舗に大人数を配置する必要もなく、教育コストもかからないため、経費削減にもつながります。

スペースを節約できる

店舗ごとに仕込みや加工を行う必要がなく、あらかじめセントラルキッチンで下処理・調理を済ませた食材を配送できる点もセントラルキッチンのメリットです。

セントラルキッチンを導入すれば、客席や販売スペースをより広く確保でき、家賃の高いエリアでも効率的なレイアウト設計が可能になります。

迅速なメニュー展開が行える

セントラルキッチンを活用することで、新メニューをスピーディーに全店舗へ展開できるという利点もあります。

セントラルキッチンで新メニューの導入や既存メニューの変更が統一的に行えるため、迅速なメニュー展開にも対応できます。

HACCPの安全基準を満たしやすい

HACCPとは、食の安全性を守るために制定された国際的な衛生管理基準です。HACCPに準拠した安全性を保つことで、効率的に食の安全を確保することができます。

セントラルキッチンは調理が集約されているため、食材の納入・保管や調理といった各工程において効率的に品質チェックが行えます。

セントラルキッチンのデメリット

セントラルキッチンは調理工程の集約によるメリットがある一方で、コストやトラブルへの対応などのデメリットもあります。

ここでは、セントラルキッチンのデメリットを解説します。

初期費用や輸送コストがかかる

セントラルキッチンの導入には初期費用や輸送コストを考慮する必要があります。

調理設備や冷蔵・冷凍庫、配送用の保冷車両、衛生管理システムなどを整えるためには、数百万円から数千万円規模のコストが発生します。

また、セントラルキッチンで調理した料理を各店舗へ配送する際には、輸送コストが継続的にかかる点を忘れてはいけません。

ガソリン代やドライバーの人件費、車両のメンテナンス費用などが積み重なり、運用コストが膨らみやすい点も課題です。さらに、配送距離が長くなると、料理の温度管理や品質保持にも注意が必要となり、結果的に保冷設備や包装資材のコストも増加します。

メニューの自由度が下がる

セントラルキッチンは調理工程をマニュアル化して一元化できるという効率化におけるメリットがありますが、言い換えればクリエイティブな調理はできません。

セントラルキッチンは各店舗で調理の大部分を中央キッチンに依存するため、店舗ごとの創意工夫が難しくなり、地域の特性やお客様の好みに合わせたアレンジがしづらくなります。

仕込みや調味の工程がマニュアル化されているため、調理スタッフが腕をふるう機会も減り、料理の個性が薄れてしまうこともあります。

調理の工程が機械的になり、シェフや料理人のやる気を削いでしまう可能性も。スタッフを募集する際に魅力ある仕事であるとアピールするポイントが薄くなりますので、訴求点を熟考する必要があるでしょう。

トラブルの対応が遅れる可能性がある

セントラルキッチンでは、その一極集中型の仕組みゆえに、トラブルが発生すると全店舗に影響が及ぶリスクが高くなります。

たとえば、機械の故障や停電、食材の納入遅延、スタッフの欠勤といった小さなトラブルでも、生産ラインが一時的に止まってしまえば、各店舗への納品が遅れます。現場で食材を補う柔軟な調理ができないため、トラブル発生時に「代替対応」が難しい点が大きなデメリットです。

万が一衛生管理上の問題が発生した場合、すべての店舗や施設で料理の提供がストップしてしまう点もデメリット。営業をストップさせないためにも、日々の徹底した衛生管理が必要です。

店舗のスタッフ教育には不向き

店舗で働くスタッフの「調理技術」や「判断力」を育てる場が少なくなり、人材教育の観点からは不向きである点も、セントラルキッチンのデメリット。

セントラルキッチンで調理された食材は、各店舗に届けられた後、盛り付けや温めといった最終工程を行うだけで提供できるケースが多く、「作る」よりも「提供する」仕事が中心になります。

結果として、現場での応用力やトラブル対応力が育ちにくくなり、人材の成長スピードが遅くなる傾向も。また、料理に対する感性や創造性を磨く場が減るため、スタッフのモチベーション低下にもつながりやすい点も課題です。

配送時の品質確保が課題となる

セントラルキッチンでは、常に「配送時にいかに品質を保つか」という課題を常に抱えています。

特に、気温や湿度の影響を受けやすい食品は注意が必要です。夏場は温度上昇による食中毒リスク、冬場は乾燥や冷えによる風味の劣化が起こりやすく、保冷車や真空パックなどの設備を整える必要があります。

配送時間が長くなると、作り立ての新鮮さを保つのが難しくなります。たとえば、揚げ物の衣がしんなりしたり、スープが分離したりといった変化は避けられません。

また、店舗スタッフの管理体制や再加熱の方法が統一されていないと、せっかく中央で整えた品質が最後に崩れてしまう可能性もあります。

セントラルキッチンの相場

小規模なセントラルキッチンの場合、全体でかかる費用は500万円程度です。物件取得や施設譲渡で100〜300万円程度、改修で100万円程度の資金が必要。さらに調理器具や備品で100万円程度かかります。工事費の相場は坪単価10〜50万円ほどとお考えください。スケルトン物件の場合は坪単価30〜50万円、居抜き物件の場合は坪単価15〜30万円を想定しましょう。

セントラルキッチンの設備

セントラルキッチンに必要な設備には、下記のようなものがあります。

  • 冷凍冷蔵庫
  • 炊飯器
  • シンク
  • コンロ
  • フライヤー
  • スチームコンベクションオーブン
  • 調理台
  • 真空包装機
  • 急速冷凍機
  • 冷凍ストッカー

毎日店舗へ配送する場合と、週に何回か配送する場合で必要な設備は少しずつ変わってきます。例えば冷蔵庫やストッカーの大きさは、原材料や調理済み食品の量によって検討する必要があるでしょう。それでも収納が追いつかない場合は、外部の冷凍冷蔵庫を別途契約することもできます。

厚生労働省では、「大量調理施設衛生管理マニュアル」を公開しています。セントラルキッチンに必要な設備や衛生管理システムなどがまとめられていますので、参考にしてください。

セントラルキッチンの調理方法

セントラルキッチンと親和性が高いのは、パンやパスタなどの冷凍しやすい食品。オーブンにスチーム発生装置を取り付けたスチームコンベクションオーブンを使えばセントラルキッチンで火を使う必要もありません。ここでは、セントラルキッチンにどんな調理方法があるのか確認してみましょう。

クックチル

クックチルとは、調理後30分以内に冷却し、90分以内にさらに急速冷却をしてから保存する調理方法です。提供前までは0度〜3度で保存し、再加熱して提供前に再加熱します。

クックフリーズ

クックフリーズとは、加熱調理した食品を30分以内に凍結し、最終的にマイナス18度まで凍結する調理方法。クックチルと同じように、提供のタイミングで再加熱します。

真空調理法

真空調理法とは食材を調味料と一緒に真空包装して袋のまま加熱し、急速冷却(もしくは急速冷凍)する調理法です。調理には湯煎器やスチームコンベクションオーブンを使用します。

クックサーブ

加熱調理後すぐに料理を提供するのがクックサーブです。セントラルキッチンの場合はあまり採用されませんが、基礎知識として覚えておきましょう。

セントラルキッチンの配送方法

セントラルキッチンで調理した半・完全調理品は、冷蔵やチルド、冷凍などの方法で配送されます。各店舗に配送された調理品は店舗で仕上げ調理がなされ、消費者の元に届けられる仕組みです。

常温・冷蔵配送

冷蔵配送とは5度〜マイナス5度までの温度帯で配送する方法です。食品ごとに温度管理の範囲が定められており、厳密な温度管理が要求されます。

常温・冷蔵配送のメリット
  • 盛り付けまで完了できる
  • 店舗で解凍作業をする必要がない
  • 盛り付けまで行った状態で配送できる
常温・冷蔵配送のデメリット
  • 衛生管理が難しい
  • 消費期限が短いため在庫管理が大変
  • 早朝や深夜にセントラルキッチンを稼働しなければいけない場合がある

チルド配送

チルド配送とは、0度〜5度の温度帯で配送する方法。配送には冷蔵・冷凍車を利用します。

チルド配送のメリット
  • 店舗での解凍や仕上げ作業を短縮できる
  • 調理後4日ほどは保存ができる
  • 早朝や深夜にセントラルキッチンを稼働する必要がない
チルド配送のデメリット
  • 衛生管理が非常に難しい
  • 配送頻度が冷凍品よりも高くなる
  • 国内に公式ガイドラインが存在しないため、海外のルールを参考にする必要がある

冷凍配送

冷凍配送では、調理した食品を急速冷凍機で冷凍・保存し、各店舗に配送します。近年、冷凍技術はどんどん進化しており、出来立てのおいしさを提供できる商品開発が可能となりました。冷凍配送では、温度管理を厳重に行ったり、真空包装を行ったりといった工夫が必要ですが、食材の鮮度を保ちやすくなります。

冷凍配送のメリット
  • 保存期間が長い
  • 出来立ての状態を保ったまま店舗で提供できる
  • 冷蔵やチルドよりも在庫管理が簡単
冷凍配送のデメリット
  • 冷蔵やチルドよりも製造工程が増える
  • 配送先で解凍作業が必要
  • 製造できる商品が限られる

セントラルキッチンの導入手順

セントラルキッチンは主に3つの手順で導入できます。料理の特性を踏まえ、品質とコストのベストバランスを見極めることが大切です。

  1. 物件を取得する
  2. 必要設備や人員を洗い出す
  3. 削減できるコストと新規コストを比較する

物件を取得する

まず必要なのは物件取得です。スケルトン物件よりも居抜き物件の方がコストを抑えられるでしょう。物件の内装は耐火性や耐水性のある素材、消毒薬品に強い素材を選んでください。掃除をしても内装が劣化するのを防ぐことができます。

必要設備や人員を洗い出す

物件が取得できたら、設備を設計しましょう。従業員同士の事故が起こらないよう、厨房器具の脚の高さは30cm以上にすることをおすすめします。また、セントラルキッチンの導入でどれくらいの人員を削減・追加できるのかも整理してください。

削減できるコストと新規コストを比較する

最後に削減コストと新規コストを比較します。セントラルキッチンがあれば料理を提供する店舗に大掛かりな調理施設が必要ありませんので、面積の小さい物件で店舗拡大が可能になります。教育コストも減らせるため、新店舗出店へのハードルも下がるでしょう。

セントラルキッチンに関するよくある質問

学校給食現場でセントラルキッチンの導入が進む背景は?

学校給食現場では人手不足が問題となっており、セントラルキッチンの導入が進んでいます。また、コスト面の合理化も大きな導入理由の一つ。食材を一括で仕入れたり調理工程を一括化して効率化できるため、セントラルキッチンの導入が全国的に進んでいます。

病院でセントラルキッチンの導入が進む背景は?

病院給食は朝昼晩の三食を大量かつ正確に提供する必要があり、長時間労働になりがちであるため、調理員や栄養士の確保が難しくなっています。病院給食では衛生管理体制の強化は必須であり、衛生的な施設で食材管理・調理・配送までを一元管理できるセントラルキッチンが選ばれています。

介護施設でセントラルキッチンの導入が進む背景は?

介護施設でも人材の確保が課題となっており、セントラルキッチンを導入することで、施設内の調理負担を軽減し、人材不足を補う動きが進んでいます。厨房業務は早朝勤務や重労働が多く、離職率が高くなっています。セントラルキッチンで施設内の食事を用意することで深刻な人手不足の問題を解決できるというわけです。

スーパーでセントラルキッチンを導入する効果は?

従来は各店舗ごとに惣菜の調理を行っていたため、人件費や作業負担、味のばらつき、衛生管理の難しさといった課題がありました。その課題を解決するのがセントラルキッチンです。セントラルキッチンを導入することで、調理を一か所に集約し、大量調理や分業体制を整えることができるため、作業の効率化や人件費の削減が可能になります。

セントラルキッチンは店舗運営にどのような影響を与えますか?

調理工程の大部分を本部のセントラルキッチンで担うことで、店舗の作業負担が大幅に軽減されます。その結果、少人数でも効率的に運営でき、人手不足の緩和やシフト管理の柔軟化につながるでしょう。また、厨房設備の縮小によりバックヤードスペースを有効活用でき、売場面積を広げたり、イートインコーナーや新しい商品棚を設置したりすることが可能になるというメリットもあります。

まとめ

セントラルキッチンは、人と設備を集約化して一括調理や製品管理を行える施設で、多店舗展開の飲食店や病院施設などで導入されています。セントラルキッチンの調理工程をマニュアル化することで、製造力を強化できるでしょう。

ただしセントラルキッチンには初期費用がかかるといったデメリットがあるため、デリバリーを専門に行うゴーストレストランや飲食店が副業としてデリバリー業を展開するバーチャルレストランも選択肢の一つとして検討することをおすすめします。

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KitchenBASEは、デリバリーに特化した飲食店向けの業務用キッチンです。デリバリー専用の効率的な調理・梱包・配送が可能なレイアウトと設備が整っていますので、デリバリー専門店の調理やキッチンカーの仕込み、業態開発などさまざまな用途に活用できます。

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